まったく更新されない日記

思い立ったときに書くだけ

三十歳、憧れの香り

夏生まれのせいか、毎年7月を境に気持ちが浮き立ちはじめる。

蒸せかえるような雑草の匂いや、焦燥感を掻き立てる蝉の鳴き声。

肌を焦がす太陽と、汗ばんだ首筋に吹き吹き付ける熱風。

暑さにおぼえる倦怠感や、

「あー暑すぎる。嫌になるね」と交わす言葉も含めて夏が好き。

 

そんな7月真っ只中、ついに三十路を迎えた。

香水好きの知人からお誕生日プレゼントとして

ディプティックのフルールドポーをいただいた。嬉しい。

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柔らかな布のようなムスクと、

パリッとしたホテルの高級リネンを思わせるアイリスがベース。

アクセントのピンクペッパーがキリッとした洗練さをプラスしてくれる。

"肌の上の花"という意味を持つこのオードパルファム(なんと素敵な!)。

その名の通り、この香りが実力を発揮するのはムエットではなく肌の上に乗せてから。

 

トップノートで「これじゃない」感を抱いても、騙されたと思って20分待つ。

すると、どこからともなく「アンニュイさ」が匂い立つのに気付く。

皺の寄った真っ白なシルクのベッドシーツを夕日がどっぷりと橙に染める寝室で、

長い前髪をかきあげて煙草に火をつける美しい女性が見える。

立ち上がる小麦色の足首には、もれなく金色のアンクレットが揺れる。

 

…と、私の頭の中に住む赤毛のアンが今にも小説を書き出す勢い。それくらいこの香りの魅力に夢中、ほんとうにほんとうに、大好きな香り!

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20代は「海外の少年みたいになりたいな」なんて

ポップな衣服を好んだ時期もあったけれど、

30歳の憧れはまさにこのフルールドポーの香りが似合う女性。

高校生の頃から「明日からは上品な女の人になる!」と豪語しては

次の日に裸足で廊下を歩く、なんて野生さを隠しきれなかったものだけれど

今年こそは上品な女性になりたいと想いを馳せて

せめて香りだけでも、と

お守りのようにフルールドポーをバッグに忍ばせる日々。